ロータリーミキサーから最高の音質を得るには、正しいセッティングが必要となってきます。各メーカーごとに仕様に若干の違いがありますので、それらを把握することがポイントです。
共通して理解しておくべき項目は以下になります。
- リニア電源の使用
- コンセントの極性を合わせる
- ターンテーブルを使用する時はアース線を接続
- ケーブルの使い分け
- 電源の入れる順番
- ウォーミングアップ
- ミキサーのユニティーゲインを知る
- メーターポジション
- 各チャンネルEQとマスターアイソレーターの違い
- エフェクターを使用するためのセンド&リターン
- 【おまけ】家の電圧を変更する
それでは各項目ごとにチェックしていきましょう。
リニア電源を使用
ミキサーによっては、リニア電源、またはリニアPSU(Linear Power Supply Unit)と呼ばれる電源が付属してます。※オプション料金で付けることが出来るメーカーもあります。
リニア電源とは一定の電圧の直流電流を出力する装置のことで、一般的なスイッチング電源と比べて、ノイズが少なく、ミキサーの音質アップに効果があります。
実際に聴き比べても、はっきりと違いが分かるぐらい音質がアップするので、 利用できる場合はマストと言えるアイテムです。
一方、差し込む電源ケーブルや電源タップに関しては、変更すれば音は間違いなく変わりますが、色々試してもお金と時間が奪わるだけで良い結果が得られない場合も多々あります。
というのも、部屋の形や鳴り、ヘッドホンなどのリスニング環境によって左右されてしまうので、リスニング環境が整っていないと判断が難しいのです。
どうしてもノーマル品で満足出来ない場合は他も試してみるぐらいのスタンスでも良いかもしれません。
コンセントの極性を合わせる
オーディオ機器の電源プラグをコンセントの極性を合わせて差すことで、ノイズが減り音質がアップします。
コンセントの穴にはHotとColdという違いがあり、Hotがプラス(+)、Coldがマイナス(-)という極性を持ちます。電流はプラスからマイナスに流れるため、コンセントの穴にも電流の向きがあり、極性に合わせてプラグを挿す必要があります。
見分け方はコンセントの穴が縦に長い方がCold、短い方がHotになります。また、コンセントの穴が縦に長い方に「W」又は「N」と表記されている場合があり、プラグ側も同様によく見ると「N」や「△」など、文字や記号で表記されていることがあります。
ただ、逆になっていることもあるので、あまり宛てには出来ません。最終的には耳で判断する必要があります。
正確に調べるためには検電テスターと呼ばれる機器が必要になります。
ターンテーブルを使用する時はアース線を接続
アナログターンテーブルを利用する時は、ミキサーにアース線を接続する必要があります。
アース線には、
- 電気を地面に逃して感電を防止する
- 静電気やノイズを発生させないようにしてくれる
という役割があり、接続し忘れると「ブーン」といったハムノイズが発生します。
また、ターンテーブルを使用する時は「針圧」「アンチスケーティング」「トーンアームの高さ」など基本的な設定をしっかり行わないと良い音が出ません。
ケーブルの使い分け
ミキサーによって、使用するケーブルの種類が違います。
メイン出力には「XLR」が使用されることが多いですが、「TRS」「TS」「RCA」など、ミキサー以外にもエフェクター、オーディオインターフェース、コンポ、アンプなど、接続先によって使用する形状が変わります。
ケーブルの長さが数m程度の短い距離の時は「RCA」でも構いませんが、ミキサーとスピーカーの位置が離れていて長いケーブルが必要な時は、なるべく「XLR」か「TRS」のケーブルを使用しましょう。「XLR」と「TRS」はバランス接続のため、ノイズ対策に優れているからです。
出来ることならなるべく高品質なものを使った方が良いですが、ケーブルはピンからキリまであるので、無理してまで超高級なケーブルを使用する必要はありません。高価なケーブルが必ず良いという単純な世界ではなく、付属のケーブルが一番しっくり来たなんてこともあり得る世界です。
しかし、ケーブルによって音質が結構変わるのは事実なので、ある程度定評のあるしっかりした品質のケーブルの使用を試してみることをおすすめします。ターンテーブル 、CDJなどの再生機やDJミキサー、プレイする曲などによって合う、合わないがあったり、個人の好みもあるので、いくつか試してみると良いかもしれません。
ただ、ケーブルの世界はまさに沼なので、あまり深入りしすぎないように気を付けてください。迷った時はMogami 2534を選べば基本的にOKです。
詳しく知りたい人は「ロータリーミキサーに合うケーブルはどれだ?」をご覧ください。
電源の入れる順番
電源を入れる順番を覚えておくことで、スピーカーや機器の損傷のリスクを回避することが出来ます。
- 全ての配線を終える
- ミキサーの電源を入れる
- アンプの電源を入れる(使用している場合)
- スピーカーの電源を入れる
電源をオフにする時は、逆の順番になり、スピーカー → アンプ → ミキサーの順に電源を落としていきます。
ウォーミングアップ
アナログミキサーは電源投入後、ウォーミングアップが必要です。
特にディスクリートクラスA回路のミキサーは性質上、ウォームアップに時間がかかり、すべての電圧が安定するまでに5~10分を要します。
電源投入後、すぐに音は出ますが、より良い音のためには少しウォーミングアップの時間を設けた方がよいでしょう。
ミキサーのユニティーゲインを知る
ユニティーゲインとは、入力信号と出力信号が1:1になる状態のことです。
アナログミキサーはデジタルミキサーとは違い、フェーダーの位置によって音質の変化が大きいです。各メーカーはフェーダーにユニティーゲインとなる位置を設定しており、フェーダーをその位置に合わせることで最も良い音が出るようになっています。
ユニティーゲインより小さいとパンチのない音の傾向になり、大きくても歪んだり、ノイズが増える傾向になります。
個別のフェーダーのユニティーゲインはそれぞれ以下になります。
- Radius 4V : 10(フェーダーを回し切った位置)
- Carmen V : 7.5(個人的には6.5〜7がベストに感じます)
- AR-4 : 7
- DJR400 : 7(個人的には6.5〜6.75がベストに感じます)
- RDM40 : 7
- ISO420: 7〜10(どの位置もほぼ変わらない)
マスターフェーダーのユニティーゲインに関しては、メーカーによって明記されている場合とそうでない場合があります。ユーザーがどのくらいの音を出せる環境かによって変わるため、基本的にはマスターフェーダーは任意の位置で問題ありません。
また、最終的なポジションは自分の耳で判断するのが良いことは言うまでもありません。
メーターポジション
ミキサーにはVUメーターやデジタルのPEAKメーターが付いています。
アナログミキサーはヘッドルームに余裕を持って設計されていますので、0dBを少しぐらい超えても問題ありません。VUメーターの場合は針が0dBを超えないギリギリの位置、PEAKメーターの場合は赤色にならないギリギリの位置で緑色をキープするのが良いでしょう。
楽曲にパンチが無さすぎた時に、あえて赤色に突っ込んで、軽く歪ませて迫力を出すような使い方はありますが、基本的には赤色はオーバーレベルなので、超えた量に応じて少しずつ歪みが生じるため、ピュアな音質からは遠ざかることになります。
各チャンネルEQとマスターアイソレーターの違い
DJ用のアナログミキサーには各チャンネルに音質補正用のEQ、マスターチャンネルにアイソレーターが備わっていることがほとんどです。
ロー、ミッド、ハイの3バンドで構成されていることが多く、EQは帯域ごとにプラス方向に+6〜12dB、マイナス方向に−12〜24dBぐらいが一般的ですが、アイソレーターでは帯域ごとに完全に音をカットすることが出来るという違いがあります。
EQでは音質の補正、改善が主な用途ですが、アイソレーターは音の抜き差しで、楽曲に変化を生じさせるなど、エフェクター的な使い方が主となっています。
その設計の違いからEQよりもアイソレーターの方が位相歪を生じ、音質劣化に繋がるため、Condesa Carmen Vのように使用しない時はバイパス出来る機種もあります。
通常、音質の補正にはEQを用いた方が、音質劣化が少なくて済みますが、Rane MP2015はEQで調整するよりもフィルターやアイソレーターで補正した方が音が良いです。
Rane MP2015のように特殊なケースもあるので、実際には耳で判断する必要があります。
エフェクターを使用するためのセンド&リターン
アナログミキサーには、デジタルミキサーのようにエフェクターが内蔵されていないため、外部エフェクターに音を送って、エフェクト音をミキサーに戻してくるセンド&リターンという機能が備わっています。
各ミキサーによってセンド&リターンの方法が違うため、注意を払う必要があります。
例えば、Bozak AR-4ではセンド&リターンのボリューム調整が出来ず、インサートエフェクトのような内部回路となっているため、エフェクター側でドライとウェットのようにエフェクト量をコントロール出来る機種でないとエフェクトが掛かりっぱなしになってしまいます。また、ミキサー側にバイパス機能がないので、エフェクターを使わない時も常時エフェクター内部を通過し音質劣化に繋がるため、エフェクターを使用するならトゥルーバイパス機能が備わっているタイプが良いでしょう。
Mastersounds Radius 4ではオリジナルのマルチエフェクターが用意されていますが、こちらも特殊な設計になっており、センド&リターンを使用すると多少の音質劣化が起こります。
このように、メーカーによっては単純なセンド&リターンになっておらず、エフェクト音を求める代わりに多少の音質を犠牲にする必要があるトレードオフの関係になっていることがあります。
【おまけ】家の電圧を変更する
家の電圧を変更するのは万人向けではありませんが、より音質を追求したい方は考えてみても良いかもしれません。
電圧が高い方が音が良いというのを聞いたことはないでしょうか?日本の電圧は「100V」です。しかしアメリカは115-120V、ユーロ圏は220-240Vと、日本の電圧は世界的に見てもかなり低く設定されていることがわかります。
ケースバイケースではありますが、電圧を変更することで実際に音は良くなるケースは多いです。
家のコンセントを一部200Vに変更して、電源トランスを使って115Vまたは100Vにダウントランスして利用するのが使い勝手が良いでしょう。
ダウントランスする理由は、ロータリーミキサーの場合、最近の物だと大体はユーバーサル電源になっているので、200Vから直でも大丈夫ですが、200Vに対応していない他の音楽機材をつなぐと壊れてしまったり、火災の原因となってしまうからです。
※賃貸物件の場合は電圧を変更するために大家さんの許可を取る必要がありますのでご注意ください。
まとめ
ミキサーの製作者によって設計思想が異なるため、ロータリミキサーから良い音を出すためには、まずはミキサーの特徴をしっかり掴むことが大事と言えます。
詳しいセッティング方法については、当店の各レンタル商品ページからマニュアルがダウンロード出来るようになっているので、そちらを参考にしてみてください。