ロータリーミキサー界隈は情報が少ないですから、ロータリーミキサーのドキュメンタリーなんて、ファンにとってはホントにありがたい貴重な物ですよね。
数年経ってもなかなか増えないロータリーミキサー関連の動画。
制作に時間がかかるドキュメンタリーとなると、ことさら見つからないです。
今回はそんな中、見つかった貴重な7つの動画をご紹介します。
Here we go !
ロータリーミキサーのドキュメンタリー動画
Union Audio Factory Tour | Inside the Legendary DJ Mixer in Cornwall, UK
2004年にロンドンで創業し、Technicsターンテーブル用のインシュレーターで世界的評価を得たISONOE。その創設者であり、エンジニアであるJustin(ジャスティン)が、2016年から手作業で制作しているロータリーミキサー「ISO 420」の、狂気じみたクオリティと「音が良いミキサーの本質」を明かす至高のインタビューです。
一般的なミキサーはボリュームノブを3時方向以降に上げると、回路が飽和、クリップし始めますが、ISO 420はノブを最大にした時に最もノイズパフォーマンスが良くなる設計だといいます。最大時にポテンショメータ(可変抵抗)をバイパスして、実質的な「1本のストレートワイヤ」になるという、引き算の回路設計が語られています。
本体上部にある2つの独立したアイソレーターのオン/オフ切り替えスイッチには、音声信号自体は通っていません。スイッチを動かすと内部の「不活性ガス封入リレー」が作動し、回路そのものを物理的に直結・遮断します。
これにより、長い配線(スネークケーブル)によるクロストーク(チャンネル間の音漏れ)を完全に排除し、ハイファイプリメインアンプを領駕する最短のシグナルパスを実現しています。
あるロータリーミキサーで、レンタル業者やDJたちが「とにかく音が暖かくて最高だ」と絶賛していた某有名ミキサーを高精度オーディオアナライザーで測定したところ、「単に10kHz〜20kHzのハイエンド(高域)が3〜4dBも激しくロールオフ(減衰)していただけだった」と明かしています。
対照的に、ISONOEでは、徹底したトランスペアレント(透明性)へのこだわりを持ち、左右のチャンネルで完全に同じフェイズ・レスポンスと周波数特性を得るため、コストを惜しまず1%以下の差の超精密な部品を使用しているとのこと。
オーストラリアの公共放送ABC News(Australia)が取材した、アナログロータリーミキサーブランド「Condesa Electronics」のドキュメンタリーです。
オーストラリアのアデレードにある自宅ガレージで完全ハンドメイドのロータリーミキサーを製作しているエンジニア兼DJのMehdi(メディ)を追っています。
デジタル全盛の現代に、70年代のニューヨークの伝説的なクラブシーン(Studio 54やパラダイス・ガラージなど)で愛された「濃密でオープンなアナログサウンド」を蘇らせるために制作を始めたと言うCondesaミキサーは、現在世界中のトップDJたちから注文が絶えないほどの人気です。
動画の中でメディは、一般的な大量生産のミキサーがIC(集積回路)を使って回路を圧縮しているのに対し、Condesaでは「厳選した個別のコンポーネント(離散部品)を手作業で組み上げるディスクリート回路」を採用していると語ります。
これにより、音が圧縮されず、圧倒的にオープンなヘッドルームと、豊かなダイナミックレンジ(音の密度と躍動感)が生まれます。
現代の多くのミキサーにあるスライドフェーダーを排除し、滑らかなボリュームダイヤル(ノブ)を採用。これは世界最初のDJミキサーたちへのオマージュであり、音を「カットインする」のではなく、曲と曲のエネルギーを「美しくブレンドして溶け合わせる」というロータリーならではのミキシングの美学を象徴しています。
動画の後半では、普段デジタルミキサーしか使わない若い世代のデジタルネイティブDJが、実際にCondesaのアナログミキサーを体験するシーンがあります。
彼女は「音がとにかく丸みがあってスムーズ。5時間といった長時間のセットでも、これなら耳が痛くならない」と、その音響的特徴をリアルに述べています。
Ryan Shaw Talks About the History of Radius | MasterSounds
MasterSoundsの公式動画『Ryan Shaw Talks About the History of Radius | MasterSounds』は、デザイナー兼DJのRyan Shaw(ライアン・ショー)が、名機「Radius」の誕生背景や独自の哲学を語るストーリーです。
Radiusは、レコードディガーであるライアンと、Allen & Heath社でXoneシリーズを手がけた伝説の設計者アンディとの奇跡的な出会いによって生まれたデスクトップ型ロータリーミキサーであり、シンプルさが生む音楽的な鳴りとプレイの楽しさが追求されています。
ライアンは、アンディから送られてきた最初のプロトタイプ(Radius 2)をトートバッグに放り込み、自身が金曜・土曜にプレイしていたお気に入りのバーに持ち込みました。
レコードに針を落とした瞬間にバー全体のサウンドが完全に開放的になり、空間そのものがガラリと変わりました。
店の人間が驚いて駆け寄ってきたその瞬間に「これはいける」と確信したといいいます。
Radiusの最大の特徴は、一般的なミキサーにある各チャンネルの3バンドEQを一切排除し、その代わりにワンノブのハイパス・フィルターを搭載している点にあります。
ライアンは、EQのノブをいじくり回すよりも、フィルターで低域をダイナミックにカットし、絶妙なタイミングで一気にベースを戻すプレイスタイルの方が、どれほど音楽的で、アドレナリンが出るほど楽しいかを熱弁します。
機材がシンプルだからこそ、次にどのレコードをかけるかという選曲に100%集中することができ、これこそが彼らの目指したミニマリズムの美学となっています。
「僕らはただのミキサー会社じゃない。これは僕たちの人生であり、魂であり、血そのものだ」と語るライアンは、かつて朝4時に起きて車を走らせ、塗装業者やシルクスクリーンの印刷業者など、20年来の地元の職人たちを自ら回って筐体を作っていた泥臭い時代を振り返っています。
RA News: Solid brass custom DJ mixer installed at Spiritland in London
世界的ダンスミュージック・メディア「Resident Advisor (RA)」が制作したショートドキュメンタリー『RA News: Solid brass custom DJ mixer installed at Spiritland in London』は、ロンドンのキングスクロスにある、ダンスフロアを持たない純粋なリスニングバー「Spiritland」のカスタムロータリーミキサーに焦点を当てた作品です。
このミキサーは、完璧な出音を追求するために作られた音響システムの最上流であり、すべての始まりとなる場所として、その驚異的な製造背景と美学が語られます。
このミキサーの開発にこれほど長い時間がかかった理由は、製造に関わったメンバーのほとんどが、極めて小さなハイスペック・プロジェクトだけを手がける個人職人たちだったからです。
この機材は、F1のコンポーネントを極小ロットで製造している工場で作られました。そのため、細部に至るまで極めて精緻に、見事に作り上げられた道具となっています。
「Spiritland」に流れるすべての音は、このミキサーから特注のケーブルを伝い、アンプやプリアンプを通り、最終的にスピーカーへと至ります。その音響チェーンの最上流だからこそ、このミキサーは「完璧」である必要があったのです。
重要なのは曲と曲が境界線なく溶け合うブレンドであり、一般的なクラブのようにクイックに曲を切り替える必要がない、ダンスフロアを持たない空間だからこそ、ある種の美学が存在するといいます。
The World’s Best Rotary Mixers – Tested at Ministry of Sound
世界的なダンスミュージックメディア「DJ Mag」が制作した『The World’s Best Rotary Mixers – Tested at Ministry of Sound』は、ロンドンの名門クラブ「Ministry of Sound」のフロアに設置された世界最高峰のカスタムサウンドシステムを使用し、Allen & Heath V6、UREI 1620、Alpha Recording Systemといった新旧の伝説的な名機を比較検証しています。
ロンドンの名門クラブ「Ministry of Sound」の創設者であるJustin Berkman(ジャスティン・バークマン)が、世界最高峰のロータリーミキサーを厳正に鳴らし比べました。
ジャスティンの結果は、1位が「ARS」、2位「Allen & Heath」、3位「UREI」となり、以下のように感想を述べています。
「3位のUREIは、40年前の設計思想がターンテーブルの微小なフォノシグナルを想定しているため、現代のCDJなどが放つ高音圧なデジタル信号を受け止めるにはテクノロジーの世代的な限界があり、時代遅れになってしまっていのだと思います。
第2位の「Allen & Heath」は、極めてクリーンで、本当に美しい響きでした。
1位の「ARS」については、ダイナミックレンジ(音の躍動感)が圧倒的に突出し、どこまでもクリーンで、本当に、本当に美しいサウンドでした。
正直に言えば、3台のうちどれを自宅に持ち帰っても最高です。しかし、あらゆる小さな音響的欠陥(歪みやノイズ)が超巨大に増幅されて暴かれてしまう、この『Ministry of Sound』のメインシステムにおいて、ここでプレイしたことのある大半のDJが証言するように、“ARSこそが本物” でした。これが、私たちが選んだ究極の1台です」
Listening To $40,000 Worth Of High-End Mixers | Beatsource Tech
Beatsourceが運営するDJ機材・テクノロジーに特化したメディア部門「Beatsource Tech」のMojaxxがイギリス・ダーリントンにあるDJショップ「Phase 1」のオーナーと企画した、総額33,000ポンド(約650万円)相当のミキサー10台以上を集めたショップ発のリスニングセッションです。
AlphaThetaの高級ロータリーミキサー「euphonia」を競合となる尖ったハイエンド・ロータリーミキサーたちと同じ環境で鳴らしたらどう聴こえるのか、同じレコードを1枚がけして、集まったDJやマニアたちが直感と好みだけで主観的にワイワイと語り合う現場のリアルな声がレポートされています。
今回のイベントの主役であるAlphaThetaの「euphonia」は、多機能さやデジタル接続性を備えつつ、Rupert Neve Designsのトランスによるアナログブーストがしっかり効いており、音質面で他の超強力なアナログ勢と完全に対等な土俵に立っていることが文脈の中で証明され、誰もがその音に感銘を受けました。
一方、最もオーディエンスを沸かせたのがCondesaの「Lucia」で、接続した瞬間、スピーカーのボリュームを下げなければミキサー側を適正レベルでドライブできないほど高出力であり、ベースの巨大さ、トップエンドの鮮明さ、ミッドのディテールすべてが限界突破の目盛“11“までクランクアップされたような、圧倒的に生命感に満ちた出音を披露しました。
同様にトップパネルに端子があるCan Electricの「Taula 4」も、ローエンドのキックが凄まじくダイナミックで高評価を得ました。
Mojaxx自身が大絶賛するResorの「2525」は、顔面に一撃を食らわすようなアティチュードを持つCondesaの直後という順番だったため、持ち味である極めて洗練された透明性と解像度(リニアなフラットさ)が、PAスピーカー環境では少し大人しく聴こえてしまうというブラインドテストならではのリアルな罠が語られます。
Hendersonの「Model X」も同様に、フラット路線の堅実な選択肢として評価されました。
また、MasterSoundsの「Radius 4 MkII」は、集まった機材の半額近いプライスタグでありながらビルドクオリティが高く、同価格帯の中では極めてクリーンで精密であるという評価を得ました。
一方、真空管を積んだMasterSoundsの「Four Valve MkII」は、純粋な原音忠実性ではないものの、真空管が生成する自然な調和歪みによるローエンドの温かみがハッキリと心地よく聴き取れ、多くの賞賛を獲得しました。
今回の最大の驚きとなったのがFormula Soundの「FF 2.2」です。Mojaxx氏自身は見た目や操作性は好まないとしつつも、オーディオファイル用ではなくPAシステム(クラブの現場スピーカー)で鳴らすために設計されているため、今回のRCFのPAスピーカー環境で最も輝き、素晴らしいフラットさと音の分離感を見せ、見た目で判断してはいけないという好例となりました。
Union Audioの「Orbit 6」は、真空管サウンドの圧倒的なファットさは流石の一言であるものの、飛び抜けて高価な価格、ラックマウントのデザイン、そしてノブの抵抗感が非常に重いという点は、集まったDJたちの間でも好みが分かれるリアルな意見が漏らされています。
超格安のOmnitronic「TRM-422」は、価格に対してプリアンプが十分に健闘し入門機としての地位を不動のものにした一方、ショップのデモ機として入ったPioneer DJの「DJM-A9」は、ビニールでの実用性はあるものの、今回のハイエンド勢やeuphoniaと比べてしまうと音が明らかに圧縮され、空気感が損なわれているというシビアな現実が浮き彫りになりました。
動画の締めくくりとして語られたまとめでは、システムマッチングの重要性が示されています。Eclerの「WARM 4」がスタジオモニターで最高なのに今回のPAスピーカーでは本領を発揮しきれなかったように、ミキサーはスピーカーやカートリッジ、かける音楽のジャンルとの相性で全く表情を変えます。
そして、インターネット全盛の時代だからこそ、同じ熱量を持った人間が集まり、機材や音楽、人生について語り合える地域のDJショップのような場所をサポートし、そこで実際に自分の耳でデモ(試聴)をすることの大切さが伝えられています。
まとめ
いろんなドキュメンタリー動画がありましたね。
動画内でしか語られていないエピソードなんかもあり、個人的にかなり楽しめました。
雰囲気的に、E&S、UREI、Bozakあたりのドキュメンタリーも作れそうですよね。
今後、ダンスミュージック系の大手メディアが制作してくれることを楽しみに待ちますか。

