ロータリーミキサーはアナログだからこそ、音の「クリアさ」だけで比べるとデジタルミキサーには敵いません。しかし、そのクリアさと引き換えに、人が心地よいと感じる独特の音成分(倍音や温かみ)が加えられます。
ロータリーミキサーは職人の感性によってチューニングされているため、モデルごとに作りも違えば音のキャラクターも様々です。高域(ハイ)がパキッと聴こえるもの、低域(ロー)が豊かなもの、心地よいサチュレーション(歪み)が加わるものなど、実に個性的。そのため、プレイする曲によって「この曲はAのミキサーが映えるけれど、別の曲ならBのミキサーの方が気持ちよく聴こえる」といった違いが生まれます。
ここからは、当店にあるロータリーミキサーを実際に触って、聴き比べて感じたことをレビューしていきたいと思います!
ロータリミキサー音質比較
Mastersounds Radius 4V

全体の周波数バランスが非常に優れた一台です。 真空管によるサチュレーション効果で、密度が高くパンチのある音に仕上がっているのが特徴。そのため、もともと倍音成分が豊かな(音の密度が高い)曲だと少し重たく感じられることもありますが、アタック感がハッキリした曲ではそのパワーを100%発揮してくれます。
特にCDJなどのデジタル音源を使う場合、レコードよりもアタックが硬くなりがちですが、このミキサーを通すことでトゲが取れて「いい感じ」に音が丸まってくれます。ジャンルとしては、どちらかというとテクノ系にバチッとハマるおすすめのミキサーです。
Bozak AR-4

フェーダーに心地よい重量感があり、回しているだけで気持ちが良くなる一台です。
PHONO(レコード使用時)は、デジタルミキサーと遜色のない高域の伸びを見せ、クリアかつ軽やかな音を鳴らしてくれます。音に絶妙な軽快さが出るため、アナログ機材でプロセスしたような「濃いめ・Lo-Fiな質感」の曲もすっきりと心地よく聴かせることが可能。高域の減衰がさほどないので、普段「アナログよりデジタルな音が好き」という方にも、すんなり気に入っていただける仕上がりです。
一方で、LINE(CDJ使用時)は高域がスッと抑えられ、少し落ち着いた暗めな印象にシフトします。入力ソース(PHONOとLINE)によって、まったく違う表情を見せてくれる非常にユニークなミキサーです。
Condesa Carmen V

一聴した感じは派手さがなく、クールな印象で少し分かりづらい部分もありますが、実はほどよく音が色付き、かなり深い場所で踊れるサウンドに仕上がっています。
アイソレーターのオン/オフ機能を搭載しており、アイソレーターをオンにすると全体の音量がアップ。パンチと粘りがグッと増して迫力のある音になりますが、そのぶん音のピュアさは若干減少します。なお、アイソレーターをオンにすると位相が反転する仕様です。
Mastersounds Radius 4Vと同じくアタック感のある曲を得意としますが、Radius 4Vに比べると、やや重心が高く柔らかい印象を受けます。
E&S DJR400

ロー(低域)が豊かでハイ(高域)が落ち着いているため、とても柔らかい音色です。若干ピーキーに感じる部分もありますが、耳あたりが優しく、長時間聴いていてもまったく疲れない音に仕上がっています。
倍音成分の付加はさほど多くないため、かける曲を選ばず、どのジャンルでも平均点以上を叩き出してくれるオールラウンダー。どちらかと言うと、ミニマルやテック系よりもハウス系に抜群にマッチします。
EQには余計な癖がなくスムーズにコントロールでき、アイソレーターの効きも良好。自分のイメージと実際の操作感にズレがなく、想像した通りの音が素直に鳴ってくれる扱いやすさも魅力です。
Rane MP2015

フルデジタルとは思えない、温かみのあるサウンドが最大の特徴です。Rane MP2015に比べると輪郭はクッキリしていますが、E&S DJR400にとてもよく似た周波数特性を持っています。
CDJと接続する際には、S/PDIF(デジタル)接続が選択可能。これによりCDJ側のD/Aコンバーターを通さずにデジタル転送ができるため、余分な信号ロスを無くした本来の高音質で再生できます。もちろんLINE(アナログ)接続のクオリティも非常に優れていますが、レコード使用時よりも「CDJ使用時」に真価を発揮するミキサーと言えます。(音の仕上がりは好みに左右されるため、事前にS/PDIF接続とLINE接続のどちらが良いかテストしてみるのがおすすめです)
倍音成分の付加は少なく、どんな音源にもうまく適応。滑らかで柔らかい音色なので耳に優しく、長時間のプレイでも疲れを感じさせません。
Varia Instruments RDM40

その無骨なルックスからはタフなサウンドを連想させますが、ただ力強いだけでなく、繊細さも綺麗に持ち合わせているのが特徴です。
音質はタイトでソリッド。超高域(ハイエンド)がパキッと目立つ、少しシャリシャリとした抜けの良い質感を備えています。各ツマミはオリジナリティ溢れるデザインに加えて重厚感があり、操作時のキレも良く非常に好印象です。
音への色付けはほとんどなく、どのセクションもハイクオリティにまとめられた「優等生」なタイプと言えます。ただ、他の個性派ミキサーたちと比べると、ほんの少しだけ天井が低く感じられるかもしれません。
Isonoe ISO420

オールトランジスタ回路を用いた、類を見ない「低歪み&低ノイズ」に加え、ローからハイまで過不足のない完璧な周波数バランスが特徴です。圧倒的な解像度の高さがあり、解像度の良さだけで言えば、これを超えるアナログのDJミキサーは他に存在しないのではないかと思わされるほどです。
サウンドカラー(色付け)はなく、まさに「無色透明」といった質感。そのため、プレイする楽曲自体のクオリティが高ければとことん良い音で鳴ってくれますが、逆にマスタリングなどの調整が荒い楽曲は、その不快な部分まで正直に目立ってしまうこともあります。
EQはナチュラルで緩やかな効き心地。DJプレイで積極的に音を混ぜていくというよりは、どちらかと言えばフラットな音質調整のために存在している印象です。なお、アイソレーターとEQはバイパス(無効化)することもできます。
また、付属のループケーブルはややハイ(高域)が上がりやすい傾向があるため、好みに応じたケーブルに変えてチューニングしてみるのもおすすめです。
まとめ
以上、ロータリーミキサーの音質比較でした。
今回比較した7台のうち、倍音が多く付加される(音が濃くなる)順番で並べると、おおよそ以下のようなイメージになります。
Mastersounds
Condesa
Bozak
E&S
Varia Instruments
Rane または Isonoe
実際のDJプレイとなると、音質の良し悪しだけでなく、イメージと操作のフィット感やボリュームカーブの具合、ヘッドホンモニターの聴き取りやすさ、アイソレーターのキレ、そして現場でのグルーヴ感など、チェックすべきポイントは多岐にわたります。こればかりは、実際に指先で触って操作してみないと分からないことがたくさんあります。
もし気になるミキサーがありましたら、ぜひ当店のレンタルを利用して、実際のクラブやご自宅の環境でじっくり試してみてください!

